【インドネシア】【ボルネオ】#4 オランウータン これまで、これから、

これまで

「森の人」と言われるオランウータン。

ボルネオ島だけに生息するヒト科の生き物だ。

長い手足を自由に使い、木々の間を移動する姿、

バナナやミルクで口の周りをベチャベチャにしながら食べる姿。

オランウータンの周りの時間だけはスローで再生されているかのようだ。

そんなオランウータンだが、100年前と比べ、80%も個体数が減ってしまったとされている。

人間の数で考えても80%はすごい数だ。

オランウータンはボルネオ島を生息地としている、

つまりここボルネオ島のオランウータンが80%近く数を減少させてしまったということだ。

僕が行ったタンジュンプティン国立公園内にも特定のフィーディングポイントに行かないとオランウータンを見ることができなかった。

それだけ観光客が入れるところが限られているのかもしれない。

逆に言えば、それだけ個体数が減っているのかもしれないし、保護されているのかもしれない。

オランウータンを見ていると

オランウータンをずっと見ていると教えられることが多くある。

基本的にオランウータンは集団で行動するのではなく、単独行動で動く。

フィーディングポイントに餌やりのレンジャーが来ると、

四方八方から一匹、また一匹と、オランウータンがやってくる。

ニホンザルのように集団で行動するサルがいることを考えると、同じヒト科でも全く違うことがわかる。

オランウータンの方が人間に近いことを考えると、オランウータンから人間の本質を探ることができるかもしれない。

近代の欧米的な思想の流れから、個人という考えが生まれ、日本にも輸入された。

個人という考えはよさもある一方で様々な問題を起こす要因にもなっているように感じる。

国立公園内にあるフィーディングポイントには、木製のバナナが置かれる縁台のような場所が設置されている。

次々とバナナを食べにオランウータンが集まってくるのだが、縁台がオランウータンで溢れかえることは無い。

周りから様子を伺っているのだろうか、順々にやってきては、

縁台で食べるだけバナナを頬張るもの、

少し食べてあとは持てるだけ持って帰るものがいた。

バナナの取り合いになっている光景はなかった。

そして、ほとんどのオランウータンが食べ終わった頃、

体の大きなオランウータンがやってくる。

弱肉強食の世界ならば、大きく強いもの初めにほとんどの餌を食べてしまいそうだが、

オランウータンはそうではないようだ。

大きなオランウータンがゆっくり後からゆっくり来て、残ったバナナを縁台の上でゆっくり頬張る。

自然と他のオランウータンは来なくなった。

個人主義的で、個々の序列がありながらも、

オランウータンの世界にも集団の中での流儀があるようだ。

フランジと呼ばれる身体的特徴

集団での行動を取らないオランウータンでも、特にオスの中には序列がある。

その序列は見た目的にもすぐ分かる。

バナナを最後に食べにくるような大きなオランウータンは、

体ももちろん大きく、顎の下は前掛けのようにのど袋が垂れていたり、体毛がストールのように伸びきっていたりする。

それだけで長く生きている風格があるのだが、最大の特徴は「フランジ」と言われる、顔の両脇にある出っ張りだ。

このフランジが大きく発達していると、オランウータンの世界では社会的地位が高い。

オス同士のケンカでのし上がったり、フランジを持ったオスが死んでしまったりするとフランジが自ずと大きく発達するようだ。

フランジを持つオスはこの身体的特徴と独特の声を出してメスに対してアピールするようだ。

ここタンジュンプティン国立公園内の資料館には歴代のフランジの写真が展示されている。

環境破壊

資料館にはオランウータンの数が減ってきているということを強調する資料も多く展示されていた。

展示されていた資料でも、熱帯林が以前よりも破壊されてしまったことがわかる。

オランウータンはワシントン条約でも絶滅危惧種として登録されている。

短期間で絶滅が危ぶまれるほど個体数が減ってしまった要因は大きく3つある。

「気象変化」、「森林伐採」、「密輸・密猟」だ。

一つ目は、地球温暖化に伴い、気象変化がおき、雨季には雨が増加することで主食の果実類の生育が減少してしまっている。

また、乾季にはエルニーニョ現象がたびたび発生し、大規模森林火災が起きて、オランウータンの命を奪うだけでなく生息地の減少している要因になっている。

二つ目の森林伐採は、人間の利己的な行動によるものだ。

工場の建設や大規模プランテーションに転換するため熱帯林が伐採されたり、輸出用に木材を取るために伐採が行われていたりする。

その結果、生活の場や食べものが減ってしまっているということだ。

僕が行った時も、熱帯林の周りにはパーム油を製造するための大きな工場がいくつもあった。

三つ目に、密輸と密猟だ。

ワシントン条約で輸出入の規制がされているにもかかわらず、他国へオランウータンを連れて行くために捕まえたり殺してしまったりしてしまっているということが起きている。

これから

刻々と状況は変化している。

自分には何ができるかということは、人それぞれ考え方が違うだろう。

そのやり方がよいのか悪いのかは僕には判断できないけれど、

一番大切にしたいことは、

オランウータン、

そしてカリマンタン島に住む人や関係者たちが、

どう思い、何を欲しているのかを洞察することだと思う。

自分には何ができるか。

現地に行ってみることもいいだろう。

募金だっていいし、関連書籍を読んでみることもいいだろう。

何かをやってみることで次に繋がる発見があるかもしれない。

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4年前

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