2019年、ドラマ「サ道」、フィンランド映画「さうなのあるところ」をはじめ、サウナブームが到来した。
今まで銭湯には頻繁に行っていたが、サウナは避けていた。しかし、2019年9月に日本で公開されたフィンランドのドキュメンタリー映画「サウナのあるところ」を観て、試しにいつもの銭湯に行くついでにサウナにも入ってみた。
それからというもののサウナにハマっている。銭湯に行っていてどうして今までサウナに入ってこなかったのだろうと思った。
ハマる前は「サウナなんて我慢強くなるため」くらいに思っていた。でも、サウナの世界も奥が深かった。
「サウナなんて熱いだけでしょ」「わざわざ熱い部屋に入らなくても」「身体に悪そう」
といったイメージをもつ人にぜひ読んでもらいたい。
\○サ活とは
サ活は「サウナ活動」の略。簡単に言えば、サウナに行くことだ。最近では上述の通りドラマの影響もあり「サ道」サウナの道といったりもする。
また、サウナに頻繁に行く人をサウナーなんて言うこともある。
ただ「サウナに行くこと」を「サウナだけに入る」としてはいけない。「サ活」にはベースとなる3つのサイクルがある。
この一連の流れを繰り返すことで「サ活」の最終地点「ととのう」に到達することができる。
では、そのベースとなる3つのサイクルを紹介する。
○3つのサイクル
「サウナ」→「水風呂」→「外気浴」。これがベースとなる3つのサイクルだ。このサイクルを繰り返すことで、精神的にも身体的にも「ととのう」と呼ばれる状態に到達することができる。サウナ界の上級者と呼ばれるプロサウナーはこのベースをもとにアレンジを加えたり、時間や温度設定などにこだわったり、独自のルーチンを確立するようである。
サウナ
サウナには大きく二つのタイプがある。
乾式(ドライサウナ)と湿式(スチームサウナ)だ。
銭湯によくあるサウナはだいたい乾式のサウナだ。90度以上にストーブで温められた室内、湿度は10%程度のサウナ。遠赤外線を使用している施設もありその場合は体感温度が10度程度上がる。入っていると、じわじわと体が温まり、汗が出てくる。鼻の穴の中が、スースーヒリヒリしてくる感じがある。また、耳や頭皮が熱くなることもあり、僕はサウナハットを使用するようになった。
一方、湿式のサウナはフィンランド式のサウナが代表的だ。乾式サウナのように高温ではないが、熱せられた石、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させ体感温度を上げること、いわゆるロウリュで乾式と同じような熱さを感じることができる。日本ではアウフグース(熱波)を送ることまでを含め、ロウリュと呼ぶこともある。
どちらのサウナでも、サウナに入っていると、頭の中がぽわ~んとしてきて、絡まっていた糸が一本ずつほどけてくるような感覚になってくる。複雑化した思考回路が整理されてくるのだ。熱さによって多くのことを考えられなくなり、より重要度が高いものが残るのかもしれない。サウナによっては、テレビが設置されていたり、音楽が流れていたりする。その中でも、無音、もしくはラジオ放送程度のサウナをおすすめする。なるべくサウナの中では情報量を減らし、自分の思考を整理していくことができるからだ。
水風呂
サウナで汗が止まらなくなってきたあたりで、サウナを出て水風呂に入る。僕の場合、時間にして5〜10分程度。無理をしてサウナに入っていてもストレスが溜まってきて逆効果になる。サウナは良しとしても、「水風呂になんて入れない」と考える人もいるかも知れない。僕もサ活を始める前は水風呂に入る習慣はなかった。しかし、一度思い切って水風呂に身体を沈めてみると、その気持ちよさはとてもドープな感覚になるものだった。それからはサウナに入って水風呂に入らないなんてモッタイナイとすら思うようになった。僕がそう思うようになったのは、水風呂に一定時間入っていると感じる状態、温度の「羽衣」と呼ばれる状態を体験したからだ。「羽衣」の状態とは、サウナによって熱せられた身体が20度前後の水風呂によって急激に冷やされた際に、肌の周りだけがじんわりと温かくなってくることだ。身体と水風呂との間に温かなベールのようなものがまとっている感覚になるのだ。これが最高に気持ちよい。ぜひ、「羽衣」状態を多くの人に体験してほしい。しかし、浴場によっては、バイブラが効いていて、「羽衣」が作られにくい水風呂もあるので気をつけてほしい。サウナでの無音同様、シンプルに水だけの水風呂を僕はおすすめする。
外気浴
サウナ→水風呂ときて、最後は、外気浴。外気浴とは、露天風呂がある場合は外で、無けれでは脱衣所などのスペースでボーッとする休憩時間のことだ。その際、椅子(サウナ−の間では「ととのい椅子」と呼ぶ)に座って、、気が済むまでゆっくりするのがおすすめだ。
サウナ愛好家の本田・松尾が「外気浴こそがサウナのメインだ」というほど、外気浴のために熱いサウナや冷たい水風呂に入ったといっても過言ではないらしい。サウナの本場フィンランドでも、外気浴がメインということだ。その理由は、サウナと水風呂では交感神経が優位に働くが、外気浴では副交感神経が優位に働き、リラックスできるからだ。
○サウナの効果(まとめ)
身体的・精神的効果
・自律神経が鍛えられ、メンタルが安定。
サウナと水風呂によって、交感神経が刺激され、活動的である種の興奮状態から、外気浴をすることによる副交感神経優位のリラックス状態になることで、自律神経が刺激され鍛えられる。本田・松尾によれば、「自分の基準である体温や脈拍へと一旦リセットされ、リブート(再起動)される」感覚になる。
・内省できる。
メンタルが安定するとともに、思考が整理され、頭の中の情報に優先順位ができ、自分にとって重要なものについて深く考えることができる。
・血流を良くし、肩こり解消
サウナによる体温の上昇と水風呂による体温の下降により、血管が膨張・伸縮を繰り返し、血流が良くなる。それによって体のこりも解消される。
・睡眠の質が高まり、疲労軽減
身体の温まりと運動後のような程よい疲労感によって、深い睡眠を得られ、結果的に精神的にも身体的にも疲労が軽減される。医学的にも研究が進められているようだ。
・免疫力アップ
オーストリア・ウィーン大学の研究チームにより、習慣的にサウナに入ることで、風邪にひきにくくなり、身体の免疫力がアップしたという研究結果が出ているらしい。
・心臓やアルツハイマー病などの健康リスク軽減
東フィンランド大学の研究により、心臓病やアルツハイマーへのリスクが軽減されるという研究結果が出ているらしい。
・ご飯が美味しくなる。
細胞が脱水状態になっているため、食べ物や栄養素の吸収率が上がるようだ。実際に体験すれば実感できると思う。サウナ−の間にはサウナ後に食べるご飯のことをサウナ飯といったりする。
ソーシャル的効果
・対話の場として
映画「サウナのあるところ」では、寡黙といわれるフィンランド人の男性たちが、自分の悩みを打ち明けたり、過去を明かしたりと普段は話せないようなことを涙を流しながら語っていた。心も体も裸の状態、言わば無防備な状態になっているためか、サウナという空間ではすべてがフラットになり自然と本音の話ができる。たとえ隣にリオネル・メッシがいてもだ。
・サードプレイスとして
本田・松尾によると、ビジネスパーソンにとって、サウナは家でもなく会社でもない第三の場所として機能するようだ。1000円ちょっとで心と身体のコンディションを整えてくれる合理的な場所としてサウナは活躍する。
参考文献
本田直之 松尾大「人生を変えるサウナ術」